アジサイ寮

『銀座の老舗、カステラ店の常務と四丁目でばったり出会った。
珍しく浮かぬお顔。
『やられた!』
どうなさったのですか、
『うちの宝がみんな取られた!』
レストランで食事をしていたら、例のアパレル会社の副社長と隣りになった。
なんとうちの娘が三人も椅子に座っている』
『お蔭さんで、今どきの子は義理もわきまえておるし、会社に悪いと盛んにいいよる。』
聞いているだけでむかむかする。
『すんません、大事にさせてもらいますわ』
しゃらとした副社長のセリフ。
うちの子は皆下を向いている。泣いている。泣くなら勝手なことするな!胸の内。

許せん、まだあきらめん。しかし、一度転職の風に当たったら、癖になるな、若い子が結構理屈を言うし・・・
女は怖いな、銀座の歩き方覚えたら、どこにでも出入りするし、純情なんだか大胆なのか?

 

『会社の寮が気に入らない』
北海道から東京支店に入社した五人が辞めるという。
理由は『住所が気に入らない』と。
会社は名古屋が本社の内装インテリア、高層ビル、芸術劇場、新興住宅のインテリアコーディネーター候補。
東京支店は六本木、問題は寮の住所が青物横丁である。
郷里へ手紙を出す度に、青物横丁では東京に来たかいがない。
退職したいという本音は何か?
寮が狭い。場所が不便、銀行から帰ったらみかん一つ売っている店がない。
七時まで営業の相互銀行は都内で一つの働き者。当然他行が閉店してからの多忙さはそのまま繁栄とか。